2013年7月

第54次隊 田仲氏からの現地レポート

Report:Hiroshi Tanaka

場所:昭和基地

第54次隊の田仲宏至氏が、昭和基地から現地のいまの様子をレポートしてくれました。

田仲氏レポート

越冬交代式

2月1日、昭和基地において”越冬交代式”が執り行われました。

これは、53次越冬隊から54次越冬隊への昭和基地の維持管理のすべてが引き継がれたことを意味します。

12月下旬に昭和基地に到着してから約1か月半の間、各隊員が夏期オペレーション※1や各任務の引継ぎを行い、無事にこの日を迎えることが出来ました。

私も、53次吉岡隊員より多目的アンテナの運用・保守、そして衛星受信棟設備の維持管理の引継ぎをほぼ無事に終えることが出来ました。

短い期間での引継ぎではありましたが、充実した内容の引継書と越冬中にブラッシュアップされた手順書類とで、一つ一つを丁寧に教えてもらうことができ、安心して越冬の任務に就くことができました。

※1 54次南極観測隊の夏期期間において、観測系および設営系の隊員が遂行する任務

VLBI観測 ※2

越冬交代後、私にとって最初のビックイベントであるVLBI観測が2月11日から12日にかけて24時間連続観測で実施されました。

VLBI観測は、地殻圏変動モニタリング隊員が主体となって実施される観測です。
この観測における私の任務は、多目的アンテナ設備を運用し、はるか何十億光年離れたクエーサー(電波星)から地球に届く電波を24時間受信し続けることです。

プログラムに従って自動で動作する従順な“アンテナくん”が、良い子(正常)であることを見守る(確認する)のが私の主な任務でありますが、稀に過酷な労働条件に機嫌を損ねて仕事(追尾動作)を止めてしまう(停止する)可能性があるので、まったく目が離せない・・・、でもやっぱりかわいい子です。

※2 VLBIとは、Very Long Baseline Interferometryの略語で、日本語では「超長基線(電波)干渉法」といいます。VLBIでは、はるか数十億光年彼方の電波星(クエーサー)から発せられた電波を地球上の何点かで受信して、数千km離れた観測点間の距離をわずか数mmの誤差で測ることができます。
もっと詳しく知りたい方は、南極観測のホームページ(昭和基地NOW)または国土地理院ホームページをご覧ください。
http://www.spacegeodesy.go.jp/vlbi/ja/duty/observation.html


人工衛星や星からの電波を受信するアンテナ

アンテナを南極の過酷な環境から守ってくれるドーム

そして53次隊 吉岡隊員、昭和基地を発つ

2月1日の越冬交代式をもって、“引継ぎを『ほぼ』無事に終えることが出来た”と書いたのは、資料の読み合わせを行った上で、実際の運用を兼ねたこのVLBI観測が主となる引継ぎとして残されていたからです。

そして、例年この観測が終わると、前任者との別れがやってきます。

約1年間の別れに対する寂しさと、一番身近だった頼れる先輩がいなくなる不安と、これから自分が守って行くんだという責任感とが入り混じった複雑な心境でした。

なにはともあれ、53次越冬隊、54次夏隊のみなさん、吉岡隊員へは感謝の一言です。本当にありがとうございました、そして越冬生活(任務)お疲れさまでした。


昭和基地での最後のツーショット(左から田仲隊員、吉岡隊員)

54次越冬隊員から労いを受ける吉岡隊員(オレンジのヘルメット)

しらせに向けて飛び立つ「さようなら・・」

多目的アンテナ設備の運用・保守

ここで、多目的衛星データ受信システムの大型アンテナについて紹介します。多目的アンテナはみなさんの身近にも存在するパラボラアンテナです。

アンテナのお皿の直径は11mあり、昭和基地にあるパラボラアンテナの中では一番大きい設備で、南極の厳しい自然環境(風雪)を考慮し、レドームと呼ばれるドーム状の施設の中に設置されています。このドームの大きさと形から、昭和基地の中でもかなり目立つ存在となっています。
VLBI観測の中では、“アンテナくん”などとフレンドリーに呼んでしまいましたが、実は29次隊で基礎が、30次隊でアンテナ本体が、それぞれ設置され、昭和基地に20年以上も鎮座する大先輩だったのです(アンテナ先輩、たいへん失礼しました)。


この多目的アンテナは、毎日南極上空を通過する極軌道衛星からの電波を受信します。あらかじめ衛星の軌道を確認し、スケジュールを立て、毎日設備の準備と確認を行い、電波を受信するまでを運用と言います。また日々の運用が問題なく行われるよう、日次・月次・年次において多目的アンテナ設備の保守点検を行っています。

ルート工作に初参加

越冬交代から3カ月が過ぎた5月初旬、ルート工作に参加しました。ルート工作とは、昭和基地から離れた観測拠点などへ安全に到達することが出来るルートを確保することです。昭和基地から離れた観測拠点などへは、スノーモービルや雪上車で海氷上を移動します。

この海氷上には、氷の厚いところ薄いところがあったり、クラックと言われる裂け目があったりと、危険がいっぱいです。この危険を避けた、安全なルートを確保(工作)する任務に、フィールドアシスタント隊員指導のもと、ほぼ全隊員が参加しました。7月後半に極夜期※3が明けてから活発になる野外行動を行う上で、海氷上にある危険を認識する事は、非常に重要であり、大事なのです。

※3 極夜・・・日中でも太陽が沈んだ状態が続く現象のこと。


この旗を安全が確認されたルート上に設置

海氷にドリルで旗を立てる穴開け

ルートの方位を確認

旗を立てて完了!次のポイントへ向け出発

休日の過ごし方

みなさん、昭和基地での休日に隊員がどんな過ごし方をしているか興味ありませんか。越冬隊員は隊長を含め30名おり、過ごし方も様々です。日頃の溜まった疲れをとるため、自分の居室で読書やDVDを見ながらゆっくり過ごす隊員、カメラを持って昭和基地や周辺の風景を撮影しながら散歩をする隊員、日曜日にのみ営業する喫茶店を営む隊員、スポーツで汗を流しリフレッシュする隊員と、それぞれが思い思いの楽しい休日を過ごしているんです。

私はというと、年甲斐もなく若い隊員たちに交じりミニサッカーを楽しんだり、趣味の映画(DVD)鑑賞をしたり、散歩に出かけたりと、限られた環境の中で充実した休日を過ごしています。


夏期間の散歩中にペンギンと遭遇!(左上にペンギンの姿が)

休日にスポーツで気分転換

散歩中に見つけた、おもしろ標識

喫茶”パルフェ”の看板娘がお出迎え

極夜前、最後の散歩 氷山に囲まれて・・・

極地研究所イベント会場とのライブトーク

5月5日子供の日、昭和基地と日本の国立極地研究所イベント会場を衛星回線でつないだ、ライブトークが催されました。この日はライブ映像を通して、イベント会場に集まった子供たちへ昭和基地内の様々な施設の紹介をしたりしました。質問コーナーでは、会場に集まったみなさんとの真剣かつ楽しいやり取りがありました。

越冬隊としては、こういったイベントで、子供たちやみなさんへ南極観測に対する興味を持って頂き、理解して頂くといった任務もあります。任務という言い方をしていますが、閉ざされた環境、限られた物資や仲間しかいない中で、このように国内から応援して頂けるみなさんと接点を持てることは、隊員にとっても大変有意義な時間になります。

国立極地研究所では、このようなイベントが夏休み期間中などにも催されますので、是非お越しください。


外中継スタンバイOK

基地内紹介中、MCとライブ中継班

ライブトークスタッフと見学者集合写真

こちら昭和基地は、これから極夜期に入ろうとしています。日に日に太陽の昇っている時間も短くなり薄暗い時間が続きますが、私を含め越冬隊員全員、元気に越冬生活を満喫しております!

最後に、散歩中に撮影した昭和基地周辺の風景と先日撮影できたオーロラ写真をお楽しみください。次回は、極夜期に開催されるお祭りの様子や、極夜期明けの活動の様子をお伝えします。それではみなさんそれまでお元気で!


真夏の日差し

昭和基地の夕暮れ

氷山に映る影(昭和基地近く)

昭和基地に昇る朝日(極夜期前am11:20)

昭和基地上空にオーロラ出現(1)

昭和基地上空にオーロラ出現(2)

昭和基地上空にオーロラ出現(3)

昭和基地上空にオーロラ出現(4)