Space Solutions

小惑星探査機
「はやぶさ2」
運用支援・タッチダウン

プロジェクト概要

支援対象 宇宙航空研究開発機構(JAXA)様
支援内容 小惑星探査機「はやぶさ2」の運用支援
(コマンド送信)
プロジェクトの特長
  • 9つの「人類初」を達成した小惑星探査機の運用支援
  • 小惑星へのタッチダウン(着陸)
    やサンプル採取に成功
  • メインコマンダーを務めたのは
    チーム最年少・文系出身の女性社員

Introduction

「人類初」を成し遂げた
コマンダーたちの挑戦。

2020年12月6日、小惑星探査機「はやぶさ2」は、およそ6年間・3億km彼方への旅の成果として、小惑星「リュウグウ」のサンプルが入ったカプセルを地球に届けた。数々の試練を乗り越えて9つもの人類初のミッションを成功へと導いたのは、JAXA様とともにプロジェクトを推進したNECグループのメンバーだった。運用の最前線で、探査機へ電波で指示を送る運用者(コマンダー)として活躍したNECネッツエスアイの社員たちが、その挑戦の日々を語る。

「リュウグウ」のかけらを地球へ。

星と生命の起源に迫る、遥かなるミッション。

「はやぶさ2」は、2010年に世界で初めて小惑星からのサンプル採取と地球への帰還を成功させた「はやぶさ」の後継機。その意志を受け継ぎ、小惑星「リュウグウ」から地表および地下物質のサンプルリターンを成功させることが最大のミッションであった。これにより、太陽系や生命の起源を解き明かすヒントを得られると期待されている。NECグループはかねてより、民間側から宇宙開発に携わってきた。JAXA様の指導のもと、これまでに70機以上の衛星を製造し、運用技術支援を行ってきたパートナーなのだ。
「はやぶさ2」プロジェクトにおいても、探査機全体の設計・製造をはじめ、各サブシステムの設計・製造、搭載機器の供給、地上システム、運用技術支援をNECグループが担っている。600名からなるプロジェクトメンバーのおよそ半数をNECグループの社員が占めており、そのなかにはNECネッツエスアイの社員も含まれている。彼らは探査機に指令を届ける「コマンダー」として、JAXA相模原局で運用の最前線に立ったのだ。

Business Flow

プロジェクトの
一連の流れ

Members

担当者と
それぞれの役割

コマンダー

社会基盤システム事業部

K.F.

  • 運用

NESICメンバーのうち
最年少で文系出身ながら、
メインコマンダーを務める。

社会基盤システム事業部

K.F.

  • 運用

管制室にいる全員の思いを込めて、
タッチダウンの
コマンドを送信。

はやぶさ初号機が奇跡的な成功を納めたことで、「はやぶさ2」への世間の期待・注目度は打ち上げ前から非常に高まっていました。そんなビッグプロジェクトに参加するのは楽しみである反面、本当に私に務まるのかと強い緊張感も感じていました。
もっとも苦労したのは、やはりタッチダウンの運用です。着陸コマンドを送信する時は、プロジェクトマネージャの「GO」を受けて送信するのですが、管制室にいる全員の気持ちを全て乗せるつもりでキーを押したことを覚えています。
個人的に大変だったのは、緊張しがちな心を一定に保つこと。周囲の先輩やメンバーは緊張感が高まる場面でもユーモアを交えて粛々と仕事をこなす人ばかりだったので、その姿を見て肩の力を抜くようにしていました。
プロジェクトに携わるなかでは、技術者や学者の方々の並々ならぬ執念に心から魅せられました。一見すると無理なことや投げ出したくなるような事態にあっても、検証・議論を決して諦めず、何としてでも突破口を見つけ出す。その熱意と、いくつもの世界初の偉業に最前線で関われたことが、今後の私の人生にも非常に大きな影響を残してくれたと感じています。

コマンダー

社会基盤システム事業部

H.M.

  • 運用

コマンド運用チームのリーダー。
人材育成とチーム編成に取り組む。

社会基盤システム事業部

H.M.

  • 運用

プロジェクト成功のために、
メンバーの育成とチーム編成に注力。

打上げから地球へのサンプル投下までおよそ6年という長期にわたる本プロジェクトでは、コマンダーチームの人材育成とチーム編成が私にとっての大きなミッションでした。特に、目的である「リュウグウ」に到着すると、各国と協働して24時間体制で運用する体制に入ります。メンバーの休日なども考慮すれば、4名以上のコマンダーを育成する必要がありました。3億kmも離れた「リュウグウ」に到達するまでには3年半の時間的余裕があったので、段階的にメンバーを育成していきました。
今回のプロジェクトでは思い切った決断もしました。貴重な運用経験を将来にわたり当社の資産として受け継いでいけるよう、一番若手のK.F.さんをメインコマンダーに指名したのです。これには恐らくK.F.さん自身が一番驚いたと思います。衛星の運用を行うために必要な「第一級陸上無線技術士」の国家資格に、文系出身ながら努力して合格したことも指名した理由の一つです。K.F.さん自身は初めてのコマンド運用に挑戦したわけですが、経験者を軸としたOJTや現場チームのサポートを受けながら、メインコマンダーとして立派に成長してくれました。

Summary

高いコマンド運用技術の
共有に努め、
宇宙開発の未来に
貢献する。

NECネッツエスアイのコマンダーチームは、探査機打ち上げ前の地上試験の段階からプロジェクトに参加した。まずは地上で探査機が正常に動作することを何度もテストするのだ。その後、いよいよ打ち上げの日を迎えると、そこからは宇宙環境での本格的な運用がスタートする。探査機はまず太陽の周りを地球と並走し、1年後スイングバイ※、小惑星に向けての巡航フェーズを経て、ようやく「リュウグウ」に辿り着く。ここで、タッチダウンやサンプル採取を含めた数々のミッションをこなし、再び地球を目指して巡航する。これら一連の動作を的確に行うため、コマンダーチームが発する探査機への指令が欠かせないというわけだ。20年以上にわたって衛星コマンド運用に携わってきたNECネッツエスアイの実績と経験は、プロジェクトのなかで大きな役割を果たし、「職人技」と賞賛された。この高い運用技術をメンバー間で共有するため、技術メモの充実化や運用支援ツールの作成に取り組み、チーム全員のレベルを底上げ。効率のよい運用を実現し、多くの理学観測を支援したことでプロジェクトから表彰を受けた。「リュウグウに近づくにつれて、段々とその姿が明らかになっていく様子に非常に興奮しました。想定と異なる形状に、管制室みんなで驚き、この小惑星をどうやって攻略しようか議論することがとてもおもしろかったです」とは、メインコマンダーを務めたK.F.の言葉。未知なる世界に挑み、人知の開拓に取り組む挑戦者たちの旅はこれからも続いていく。

※スイングバイ:天体の万有引力と公転運動を利用して、宇宙探査機などの運動方向と速度を変更する方法。