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2014年1月
極夜期から2度目の夏を迎えた現在までの活動、南極の自然の様子
Report:Hiroshi Tanaka
場所:昭和基地
第54次隊の田仲 宏至氏が、昭和基地から現地の様子をレポートしてくれました。
田仲氏レポート
みなさん、たいへんご無沙汰しておりました。この記事がアップされる頃、日本はもう冬ですね。我々、54次越冬隊はここ昭和基地で2度目の夏を迎えており、先日55次隊の皆さんも基地に到着しました。思い返せば、あっという間の1年でした・・・・・。
前回は越冬交代から極夜期前までの活動の様子をお伝えしました。今回は、極夜期から2度目の夏を迎えた現在までの活動や南極の自然の様子をお伝えします。
極夜期とミッドウィンターフェスティバル(MWF)
昭和基地では、6月から7月中旬までの一ヶ月半ほど、太陽が顔を出す事のない極夜期があります。ずぅーっと真っ暗な夜の世界と言う訳ではありませんが、やはり日本では経験する事の出来ない幻想的で不思議な世界、オーロラや満天の星空を思う存分楽しめる期間でもあります。
とは言うものの、一ヶ月以上も眩しい太陽の光を見られないのは気が滅入るものです・・・。そんな気分を盛り上げてくれるのが、南半球の冬至にあたる時期に開かれる、ミッドウィンターフェスティバルです。ミッドウィンターフェスティバルは、南極にある各国の基地でそれぞれ行われますが、基地同士でグリーティングカードの交換などの交流もあります。ここ昭和基地でも、隊員みんなで手作りのお祭りを開き、この時期沈みがちな気分を大いに盛り上げることができました。
MWF 全員集合!

フォークダンスなんかも!(^^)!

かまくらの中にIceBarもオープン!

昭和基地グリーティングカード

贅沢素材をふんだんに使った鍋屋台
(海鮮チゲ、みぞれ、豆乳)

転がる太陽
7月中旬、極夜期が終わり約1ヶ月半ぶりに太陽が顔を出しました(でも1時間ほど・・・)。太陽は朝出て夜沈むもの、当たり前のことでしたが、40年間の人生において、これほど太陽が出るのを待ち焦がれたことはありませんでした。極夜期が終わった直後に見られる面白い現象、「転がる太陽(連続写真)」をご覧ください。
昭和基地を離れての野外活動
極夜期も明けて1ヶ月過ぎた8月中頃、宿泊を伴う野外活動に出掛けました。今回は、昭和基地から約30km離れたラングホブデを経由して、更に30kmほど離れたスカルブスネス、その先にあるスカーレンという観測拠点へと続く海氷上のルート工作が目的でした。ルート工作とは、昭和基地から遠く離れた観測拠点へ向かう海氷上に、道標となる旗を立てたり、ルート上の海氷の厚さを測ったりすることです。このルートを作ることにより、雪上車やスノーモービルで安全に観測拠点に出掛けることができます。
※寒冷な南極ですが、夏になれば気温・海水温も上昇し、冬の間凍っていた海氷も融けて緩み、前次隊が作ったルートが無くなるため、ルート工作は毎年繰り返されます。
また、野外活動では昭和基地周辺とは違った景色(絶景)を見ることができます。大陸から流れ出た巨大な氷山、風雪や氷河の流れでできた地形など、何万年、何十万年もの時の流れを間近で感じる事ができました。
ルートの目印、旗を立てる穴をドリルで開ける

旗を立てて、座標をGPSへ登録

氷山とわたし

ハムナ氷瀑と雪上車(SM40)

“シェッゲ(約400mの絶壁)”をバックに記念撮影

南極大陸沿岸の観測拠点小屋での夕食時の団欒

極寒の季節
みなさんご存知の通り、南極は日本とは反対の南半球にあるので、季節が逆になります。8月~、9月が真冬となり、越冬中の最低気温を記録する時期でもあります。あまりにも寒いので、こんな遊びもしてみました(^_^;)ツライ寒さもこんな感じで楽しんでしまいますよ。
凍ったカップめん(゜o゜)

凍った”カップめん”と54次隊の”イケメン”

大型パラボラアンテナ点検
越冬中の私の任務の一つ、多目的衛星データ受信設備のメンテナンスとして、大型パラボラアンテナの半年点検業務があります。
この点検では、アンテナを駆動させるための歯車のグリスアップ(古いグリスを取り除き、新しいグリスを塗る)やモーターグリスの給脂、電気的特性の測定などを行います。
点検作業は私一人では出来ないため、調理隊員、医療隊員、気象隊員、オーロラの観測をしている隊員、基地内ネットワークを維持する隊員などなど沢山の隊員の支援を受け、無事に完了することが出来ました。
余談ですが、点検を行う時期はとても気温も低く、グリスアップをする手も悴(かじか)みます。大変つらい作業ですが、休憩時間にヒーターで暖を取りながら他愛も無い話をして楽しみながら乗りきりました。
パラボラアンテナ駆動ギヤのグリスアップ

モーターオイルの給油

お待ちしておりました\(^o^)/コウテイペンギン御一行様
2013年2月14日から越冬隊30名での生活が始まって約7か月、通路を歩いていて、後ろから迫る足音だけで誰が来ているか分かるくらい限られた環境の中での生活でしたが、9月10日、越冬始まって以来のお客様が昭和基地へご来訪。
その出来事は、基地内全棟へ放送され、急いで外へ出迎えに行く隊員、管理棟の窓から眺める隊員、それぞれでした。海氷上から基地へと近づく来訪者の姿は、それはもう堂々としたものでした。このコウテイペンギン御一行様に対し、私も含め沢山の隊員が、お昼休みに挨拶へ行って参りました。コウテイと名前が付くだけあって、カメラを構えた沢山の隊員達にも臆することなく威風堂々とした立ち振る舞いでした(決まり事で、5m以内には近づいてはいけない事になっているので、ツーショットでの撮影は叶いませんでした)
8羽のコウテイペンギンが昭和基地へ来訪しました①

8羽のコウテイペンギンが昭和基地へ来訪しました②

生活係とは
ここで観測隊の生活面についてご紹介します。
日本の越冬隊は、2月に越冬を開始して、翌次の観測隊がやってくるまでの約1年、限られた人数、限られた環境のなかで生活します。その中で、可能な限り国内にいる時と近い生活ができるように、生活係という様々な係を決めて隊員全員で支え合って生活をしています。その生活係の中から一部を紹介します。
農協係
越冬生活も何カ月と過ぎて行く中で、持ち込んだ食糧のなかでも冷凍が効かないものは、徐々に不足してきます。一番早くに無くなるのは”生卵”、そして次に不足してくるのが野菜類です。その中でも生で食べるのが美味しい”キャベツ”や、色々な料理に登場する”タマネギ”などなどの生野菜がとても恋しくなります。
そんな沈んだ気持ちを明るくしてくれるのが、農協係のみなさんや越冬生活中に野菜作りが趣味となった隊員さんが栽培してくれた野菜です。栄養分を含んだ土の無い昭和基地内では、水だけで栽培可能な”かいわれ大根”、”サンチュ”、そしてこんなものまで出来るのかとビックリしたのが”キュウリ”でした。
【農協係】
かいわれ大根の種まき

収穫された、かいわれ大根

【麺係】
そば打ち①

そば打ち②

娯楽・スポーツ係
単調な生活が続く越冬生活には欠かせない係の一つです。ひな祭り、お花見、七夕、そして各月毎に隊員の誕生会、スポーツ大会などのイベントを企画し、催します。特にスポーツ大会は、運動神経の良い隊員、負けず嫌いの隊員など、隊員それぞれの個性が現れ、よりお互いを知ることもでき、集団生活の場では意外と重要な役割だったりします。
また、つい最近の話題としては、氷山の傾斜を利用し”流しそうめん大会?!”なるものが催されました。当日は天気も良く気温もそれほど低くならず、大自然の中で美味しい”そうめん”を堪能しました!(もちろん、麺つゆは調理隊員の手作り!さらに体を温めてくれるもつ鍋なんかもあったりしましたぁ)
他にも、ソフトクリーム係、麺係、喫茶係(営業日は毎週日曜日、週替わりの手作りスイーツがでます!)、漁協係、シアター係、裁縫係などなどまだままだ沢山あります!
【娯楽・スポーツイベント】
【誕生会の一幕】
誕生会、一人ずつにケーキが

なぜかタオルが・・・・

そして・・・・

こうなり・・・

こうなる(>_<)

【流しそうめん】
流しそうめん①

流しそうめん②

流しそうめん③

アイスオペレーション(公用氷採取)
越冬の終わりが近づいてきた10月~11月頃になると、「もうすぐ帰国できる、家族・友人に早く会いたい」という隊員や、「まだまだ南極の大自然を満喫したい、1年じゃ物足りない!」といった隊員など、それぞれの思いが交差します(因みに私は早く帰りたい派です)。この時期になると、帰国後に国立極地研究所が主催する各種イベントや、昭和基地と日本の小学校などを衛星回線を繋いだTV会議システムを利用して行う南極教室などで、参加者に直接触れてもらうための南極の氷を隊員総出で採取して来ます。なんと、その量はダンボール200箱以上(1箱約20kg)になります!
この南極の氷には何万年、何十万年前の空気が閉じ込められており、水に溶かすと「パチパチ」と気泡がはじけ、その空気に触れることができます。目を瞑って耳を澄ませば、そこは太古の南極大陸です(^^♪
氷山から氷を削り箱に詰める

少々、形を整えたりも・・・

で、記念撮影!(^^)v

ペンギンセンサス
昨年の12月に昭和基地入りして2度目の夏、アイスオペにつづき、この時期に隊員全員で行われるミッションの一つにペンギンセンサス(アデリーペンギン個体数観測)があります。
南極の夏の時期になると、北の暖かい海から昭和基地周辺の島や大陸沿岸に、アデリーペンギンが卵を産み子育てをするために大挙してやってきます。ペンギンセンサスは、このアデリーペンギンの個体数や営巣数の調査を行うミッションであり、この調査結果は、ペンギンの生態調査の研究に役立っています。数羽で見かけるペンギンはカワイイものですが、これだけいるとちょっと・・・・・
ゴマ粒みたいに見えるのは全部ペンギン。
千羽以上はいる感じ・・・

とても見晴らしの良い場所でした

抱卵するアデリーペンギン

トウゾクカモメ
ペンギンの巣のまわりで卵や雛を狙っています

昭和基地内の除雪
越冬中、ブリザード(雪嵐)の後など何度となく行われてきた建物や水槽周りの除雪ですが、11月以降のこの時期に行われる除雪は、基地内の幹線道路(ドロドロデコボコですが)やコンテナなどの輸送物資を保管する場所を中心に行われ、12月に到着する55次隊を受け入れ、夏期期間中に計画されているオペレーションをスムーズに遂行できるようにするものです。
機械部門を中心とした除雪メンバー懸命の作業により、一面雪に覆われていた各所に地面が見え始め、1年ぶりの風景が帰ってきました。
除雪作業中の様子

除雪作業後の様子

長かった、そしてあっという間だった1年、淋しくもあり嬉しくもある複雑な心境ですが、昭和基地での生活も残りわずか、怪我などには十分気を付け、まだまだ満喫させていただきます!
それでは、昭和基地内や周辺の風景、名所での記念撮影写真をどうぞ!
花が咲いたようなオーロラ

早朝に見る事の出来たカラフルなオーロラ大陸沿岸
ラングホブデ

S17内陸基点
昭和基地に一番近い内陸の拠点

日本南極地域観測隊
第一次隊が上陸式を行ったと言われる場所で・・・

ハムナ氷瀑
(海へと流れ出る氷河の尖端)

ハムナ氷瀑
(上からの眺め)

雪上車(SM100)
南極では欠かせない移動手段

氷の彫刻
by調理隊員

見渡す限りの雪原
実はここ、凍った海の上なんです

少々、荒れ模様・・・・

私の職場、衛星受信棟
砂を撒いて雪を融かしています

産まれて間もないウェッデルアザラシの赤ちゃん

癒されますねぇ
