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2014年8月
極夜に至るまでの昭和基地の生活
Report:Hirofumi Mizuta
場所:昭和基地
第55次隊の水田 裕文氏が、昭和基地から現地の様子をレポートしてくれました。
水田氏レポート
南極昭和基地より、越冬中の第55次隊 水田です。
国内ではお盆を過ぎても残暑が厳しいのでしょうか?
今の時期はギラギラとした太陽が憎らしく感じることもあると思いますが、ここ昭和基地では、極夜の期間は太陽を拝むことができません。7月13日にようやく極夜が明け、久々に太陽との再会を果たしました。8月に入り少しずつ日照時間が伸びてきており、太陽の力を身体中で感じております。
前回レポート以降、2014年2月から極夜に至るまでの昭和基地の生活についてレポートをお送りします。
越冬交代
2014年2月1日に54次隊との越冬交代を終えると、前次隊はしらせへ帰艦し、昭和基地は55次隊が維持運用することとなります。短い期間ながらも苦楽を共にした仲間がヘリで飛び立っていく瞬間には涙を流す隊員も多くみられます。
実際自分もこんなに前次隊の田仲隊員が去っていくときに悲しい気分になるとは思いもしませんでした。引き継ぎの期間中、非常に親身になってくれた日々を思い返すと寂しさで胸が苦しくなりました。
一年間、昭和基地や衛星受信棟を維持・運用したことを記念し、NESICの社旗に名前を記入します。

越冬交代式では、54次から55次へ昭和基地の維持・運用が引き継がれ、 私たち55次隊が翌次隊の来るまで責任を持って昭和基地を守ることを誓います。

ヘリで帰艦する直前の写真。胸にこみ上げる寂しさをこらえ笑顔でのお別れです。

ヘリで帰艦する隊員との別れの瞬間。 寂しさと共に自分たちで基地を守る責任感が生まれる瞬間でもあります。

越冬交代後の様々な訓練
越冬交代後は、自分たちで基地を守っていくために、万が一のための消火、レスキュー訓練や、雪上車の運転方法を教わったり、海氷上の歩き方を教わったりと体で覚えることがたくさんあります。
消火訓練の様子。放水開始時に水圧で身体が飛ばされないようしっかり踏ん張ります。 昭和基地にはいざという時の為、消火用水槽もあります。

海氷上でのドリルの使い方の講習。 その他にも海氷上にあるクラック(割れ目)の通過の仕方など安全に海氷を渡り ルート工作するための知識を身に着けます。

雪上車運転講習の様子。昭和基地から南極大陸に行くのも、除雪するのも雪上車の仕事。
命を預ける大事な相棒の動かし方をしっかり覚えます。

懸垂降下の訓練。ロープの結び方から、道具を使っての降下の仕方を覚えます。
もちろん降りるだけでなく登はんの訓練もあります。

越冬開始してからの休日の過ごし方
昭和基地にももちろん休日はあります。休日の過ごし方は隊員それぞれによって様々ですが、月に一度はスポーツイベントを開いて、隊全体で身体を動かすようにしています。それ以外にも有志を募ってお菓子作りを行ったり(目指せスイーツ男子!)、筋トレしたりと、日本でやってこなかったことにじっくり腰を据えて挑戦できるのも南極生活の魅力なのだと思います。
55次隊では、トラックをしまう前の車両倉庫を借りてのバドミントンが流行りました。

野外観測支援隊員による“オングル限界倶楽部”。
ベンチプレスをはじめとした筋トレを行い、日頃の運動不足解消とパンプアップを目指します。

元々ご飯を作るのはお手の物だったので、
昭和基地では、甘いもの好きな隊員と一緒にスイーツを作ります。
写真は国立極地研究所の南極観測ホームページ「昭和基地NOW」にも載った
ベイクドチーズケーキを焼いた時の写真です。

ウルトラ上手に焼けました~♪

除雪や他部門支援
昭和基地では、担当している多目的アンテナ業務だけでなく、人手を必要としている設営部門の支援も行います。どの隊員も少しでも基地の維持運用がスムーズになるように手の空いているときは積極的にお手伝いします。中でも昭和基地で一番大変な仕事が、除雪。昭和基地には積もるように降る雪は珍しく、ほとんどの場合ブリザードに伴い雪が建物に沿って付きます。放っておくと、がけのような部分ができて危険なので、ブリザード後は皆で協力しつつ雪を取り除いていきます。
パワーショベルを使って棟付近に積もった雪をすくってダンプで雪の廃棄場所まで移動させていきます。
何十回も繰り返し除雪していきますが、雪の量が多いので多くの時間を取られます。

除雪用の雪上車を運転することもあります。
雪の付く場所によっては積もった雪を海氷側へ押し出し、安全に通行できる歩道を作ったり、
雪が付きにくいように風(ブリザード)の通り道を作ったり、次のブリザードに備えます。

鬼のように積もった屋根上の雪も皆の力で除雪すれば・・・

いつしか姿を消していきました(*´▽`*)
こうして隊員同士で力を合わせることで信頼感や仲間意識が強くなっていきます。

食器を洗ってくれる大事なパートナーの食洗器が故障したので、
設備担当と一緒に、夏宿から持ってきた食洗器と交換している様子。
何が起きても自分たちで何とかする精神が培われます。

多目的調理隊員!?
55次は調理隊員が一人しかいません。そこで、調理隊員が野外行動に出るときは残った隊員でご飯を作らなければいけないのですが、私はご飯を作るのが得意なので、調理隊員が出ているときは厨房を任され、残りの隊員のご飯を作ります。改めて調理隊員の仕事の大変さを感じるとともに、自分の作ったご飯を喜んで食べてもらうのは嬉しいものです。
アンチョビとモツァレラのピザ焼けたよっ!

多目的調理隊員特製イタリアンフェア
~メニュー~
・コンソメスープ
・生ハムと温野菜のサラダ
・明太子スパゲッティ
・4種類のピザ
・ドルチェ(とろけるプリン)

育ちの地、名古屋名物味噌煮込みうどん。
南極では菌が非常に少ないため生卵は
結構日持ちしています。

みんな大好きラーメン!自宅近くのお気に入りのお店の味を見よう見まねで再現!

南極の自然
南極の環境では、オーロラをはじめ日本では起こりにくい現象がよく観測されます。
こういった現象を目の当たりにするたびに、南極にいることを強く実感します。
蜃気楼(浮島現象)
地平線の先にある氷山を蜃気楼が空中に映し出します。
まるで天空の城ナンチャラですね。

一面の白銀の世界
南極大陸の入り口にある「とっつき岬」から昭和基地方面を見た時の風景。
自分たちが残したわだちのほかには何もない。
植物だけでなく生物もほとんどいない世界が南極には残っています。

昭和基地を覆う一面のオーロラ。
時によって、オーロラは激しくブレイクアップし雪面が照らされるほど明るくなります。
そして大空に浮かぶオーロラは激しく揺れだします。
南極で一番心奪われる瞬間です。
