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2014年11月
極夜から10月までの越冬レポート

Report:Hirofumi Mizuta

場所:昭和基地

第55次隊の水田 裕文氏が、昭和基地から現地の様子をレポートしてくれました。

水田氏レポート

たいへんご無沙汰しております。
南極昭和基地より、越冬中の第55次隊 水田です。

間もなく日本を出発して1年が経とうとしております。
国内では秋から冬へ季節が移り変わるころで、スポーツ、温泉等々お出かけになることが多い季節ではないでしょうか?
こちら南半球にある昭和基地では、だいぶ日が長くなり、真夜中でもライトなしで歩けるほど明るい夜になってきました。そして、11月22日には終日太陽が沈まない白夜の季節を迎えます。白夜が近づくと共に、翌次隊(56次)も近々日本を出発するとの報が入り、自分たちの職場だけでなく、昭和基地全体が翌次隊の受け入れの準備を始める時期となります。
昭和基地での生活もあと少しと思うと、残りの期間も怪我することなく無事故で過ごせるように気を引き締め直す時期でもあります。
前置きが長くなりましたが、前回レポートをお送りした極夜から10月までの越冬レポートをお送りします。

南極最大のイベント、ミッドウィンター祭

極夜を迎え少し気が滅入るこの時期は、南極にある各国の観測基地同士でグリーディングカードを送り合い交流を深めるとともに、各基地において趣向を凝らしたイベントが開催されます。昭和基地では、土日を除くと休日がないため、唯一の長期休暇がこのミッドウィンターでもあります。
いい年重ねた大人たちが、童心に戻り思いっきり南極の極夜を楽しむ。そんなイベントがミッドウィンターであり、昭和基地最大の楽しみです。
毎年決まったイベントというものはなく、ミッドウィンターの開催日数からイベントの内容まで、自分たちで考え、その隊で話し合って実施します。イベントの内容を少しですが写真と共に紹介いたします。

ミッドウィンターに合わせ気象チームが中心になってかまくらを掘ってくれたので、 かまくらの中で記念写真を撮りました。

ミッドウィンターに合わせ気象チームが中心になってかまくらを掘ってくれたので、かまくらの中で記念写真を撮りました

初日には、音楽好きの隊員たちが集まって、 この日のために練習した曲をライブ形式で次々と披露しました。

初日には、音楽好きの隊員たちが集まって、この日のために練習した曲をライブ形式で次々と披露しました。

ミッドウィンター中は全員を4つに分け、 チームごとに味にも見た目にも趣向を凝らした食事を調理隊員と協力して作りました。

ミッドウィンター中は全員を4つに分け、チームごとに味にも見た目にも趣向を凝らした食事を調理隊員と協力して作りました。

この時は櫃まぶし定食でした。

この時は櫃まぶし定食でした。

各国の南極観測基地同士で交換する グリーディングカード。 2014年版クールジャパンを昭和基地からも発信・・・??

各国の南極観測基地同士で交換するグリーディングカード。2014年版クールジャパンを昭和基地からも発信・・・??

極夜が明けると野外行動が活発化越冬交代後の様々な訓練

極夜が明けると、観測のため、昭和基地付近の南極大陸沿岸部にある各地点までのルート工作を行っていきます。昭和基地沿岸部の主な地名は、昭和基地から近い順に、ラングホブデ、スカルブスネス、スカーレンとなっています。毎年海氷の状態は変わっていくので、海氷の厚さは十分か、ルート上にクラックと呼ばれる氷の割れ目ができていないか等を確かめながら、沿岸部までの道を作っていきます。

ルート工作の様子。 先導車がルートを決め、数百メートル毎に旗を立てていきます。 その後、後続車が旗のポイントを記録し、旗と旗の間の角度を測定することで、 安全に行動できるルートを少しずつ作ってきます。 沿岸部のルート工作の目的地には、それぞれ観測用の小屋が建っていて、 そこで夜を過ごすとともに、小屋周辺の調査や散策なども一緒に実施します。 人の手の入っていない大自然を目の当たりにすると、 そのスケールの大きさと景色の荘厳さに感動します。

ルート工作の様子。先導車がルートを決め、数百メートル毎に旗を立てていきます。その後、後続車が旗のポイントを記録し、旗と旗の間の角度を測定することで、安全に行動できるルートを少しずつ作ってきます。沿岸部のルート工作の目的地には、それぞれ観測用の小屋が建っていて、そこで夜を過ごすとともに、小屋周辺の調査や散策なども一緒に実施します。人の手の入っていない大自然を目の当たりにすると、そのスケールの大きさと景色の荘厳さに感動します。

ハムナ氷瀑と呼ばれる、南極大陸から海へ氷河が流れ落ちる場所。 何千年、何万年と少しずつ移動してきた氷河がここから海へと流れ、海氷となります。

ハムナ氷瀑と呼ばれる、南極大陸から海へ氷河が流れ落ちる場所。何千年、何万年と少しずつ移動してきた氷河がここから海へと流れ、海氷となります。

ラングホブデにある氷でできた天然のダム。 数十年に一度ダムが決壊し、下流の海に向かって流れ出るそうです。

ラングホブデにある氷でできた天然のダム。数十年に一度ダムが決壊し、下流の海に向かって流れ出るそうです。

スカルブスネス近くのシェッゲと呼ばれる400mの 断崖絶壁。 写真の下の方に人が立っていますが、人と比較してそのスケールの大きさが伝わるでしょうか?

スカルブスネス近くのシェッゲと呼ばれる400mの断崖絶壁。写真の下の方に人が立っていますが、人と比較してそのスケールの大きさが伝わるでしょうか?

スカルブスネスから少し歩いたところにある、表面がピカピカの池の上を歩きます。 非常に滑りやすいので歩くときは最徐行で。

スカルブスネスから少し歩いたところにある、表面がピカピカの池の上を歩きます。非常に滑りやすいので歩くときは最徐行で。

小屋の中での食事の様子。野外旅行の時には食事当番となり、毎食暖かいご飯を作りました。 寒い野外行動を行う上で美味しいご飯を食べるのは、明日の活力のためにも大事なことです。 少しでもパーティの皆に美味しいと思ってもらえることと、栄養のバランスが偏らないようなご飯を作ることを心がけました。

小屋の中での食事の様子。野外旅行の時には食事当番となり、毎食暖かいご飯を作りました。寒い野外行動を行う上で美味しいご飯を食べるのは、明日の活力のためにも大事なことです。少しでもパーティの皆に美味しいと思ってもらえることと、栄養のバランスが偏らないようなご飯を作ることを心がけました。

極寒のアンテナメンテナンス

多目的アンテナ隊員として、日々の運用チェックの他にも、半年に一度大掛かりなアンテナのメンテナンス作業があります。アンテナ駆動部のグリス交換やモーターのオイル交換等アンテナ本体のメンテナンスと、電波を受信する装置の正常性を確認することが主な作業となります。外は-30℃、レドームの中もほとんど変わらない気温の中の作業でしたが、多くの隊員に手伝ってもらい、無事にメンテナンスを終えることができました。

11mものアンテナを動かすアンテナのモーターオイル交換の様子。 写真では伝わりにくいですが、外気温が-30℃近い中での作業は、かじかむ指を常に ヒーター等で温め、凍傷や怪我に注意しながら無理なく少しずつ作業を進めていきます。

11mものアンテナを動かすアンテナのモーターオイル交換の様子。写真では伝わりにくいですが、外気温が-30℃近い中での作業は、かじかむ指を常にヒーター等で温め、凍傷や怪我に注意しながら無理なく少しずつ作業を進めていきます。

大型アンテナの背面にある小部屋で、衛星受信棟から送られる信号が正しく伝わっているか等を チェックします。

大型アンテナの背面にある小部屋で、衛星受信棟から送られる信号が正しく伝わっているか等をチェックします。

アンテナの背面小室での測定の時には、衛星受信棟から決められた信号を送信してもらいます。 ダイヤグラム測定の際にはLANインテル隊員に支援してもらいました。

アンテナの背面小室での測定の時には、衛星受信棟から決められた信号を送信してもらいます。ダイヤグラム測定の際にはLANインテル隊員に支援してもらいました。

南極の夜、オーロラ

昭和基地の夜といえばオーロラ。昭和基地は、数ある南極観測基地の中でもオーロラが比較的よく見られる場所とはいえ、毎日出現する訳ではなく、せっかくオーロラが出ても、深夜明け方に近い時間帯や、曇り空等、眺めやすい時間にオーロラが出る機会はそんなに多いわけではありません。それでも、オーロラが見えるという時には、かじかむ指と闘いながらシャッターチャンスを狙います。

放射状に延びるオーロラ。 この時は、まるで自分が中心に吸い込まれていきそうな程の揺らめきを伴うオーロラでした。

放射状に延びるオーロラ。この時は、まるで自分が中心に吸い込まれていきそうな程の揺らめきを伴うオーロラでした。

強いオーロラが出現すると、肉眼でもはっきりと判るほどオーロラは激しく揺らめきます。 神々しさと禍々(まがまが)しさが共存する 不思議な現象です。

強いオーロラが出現すると、肉眼でもはっきりと判るほどオーロラは激しく揺らめきます。神々しさと禍々(まがまが)しさが共存する不思議な現象です。

スカーレン旅行の際に出現したオーロラ。 近くの氷面にオーロラの光が反射して非常に幻想的な景色を感じることができました。

スカーレン旅行の際に出現したオーロラ。近くの氷面にオーロラの光が反射して非常に幻想的な景色を感じることができました。