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2022年3月
南極の自然について

Report:Kazutaka Mitsuno

場所:昭和基地

第63次隊の光野 和剛氏が、昭和基地から現地の様子をレポートしてくれました。

光野氏レポート

南極の自然について

南半球の夏期間に当たる12月や1月頃は、日差しがあれば半袖でも過ごすことができる陽気でしたが、3月に入ると常に氷点下の気温となり、冷え込む日が段々と増えてきました。日本(東京)と南極(昭和基地)の気温や日照時間の違いはグラフの通りであり、寒暖差は一目瞭然です。
今でも十分寒さが厳しいため、これから迎える冬のシーズンは想像を絶する寒さになりそうです。
太陽が昇っている時間が次第に短くなり、徐々に極夜に近づいていることを実感します。

気温と日照時間の比較(昭和基地/東京)

気温と日照時間の比較(昭和基地/東京)


昭和基地周辺は、空気が澄んでいて奇麗なため、天気が良い日の眺望は格別です。日本で生活していた時には感じることができないような大自然に圧倒されることが多々あります。
今月に入り、大自然の「脅威」と「美しさ」を体感したのでお伝えします。

ドローンによる昭和基地の空撮(動画4秒)


まず、大自然の「脅威」としてブリザードが挙げられます。
視程1km未満かつ風速10m/s以上の状態が6時間以上継続することが、昭和基地でのブリザードの基準となります。
視程とは肉眼で見通すことができる最大距離を指し、降雪や地吹雪により悪化します。ブリザードは以下のように、視程や風速、継続時間によりA級からC級に分類されます。

クラス 視程 風速 継続時間
A級 100m未満 25m/s以上 6時間以上
B級 1km未満 15m/s以上 12時間以上
C級 1km未満 10m/s以上 6時間以上

2022年3月には4回のブリザード(B級:2回、C級:2回)が襲来しました。
ブリザードのような荒天時には外出注意令や外出禁止令が発令され、外出することが制限されます。
また、ブリザードによる機器や設備の損傷を避けるために事前に準備し、事後には点検も行います。

発生日 風速 クラス
3月10日~12日 20.6m/s B級
3月16日~17日 23.7m/s B級
3月18日 18.2m/s C級
3月30日~31日 20.4m/s C級

ブリザードの様子(動画8秒)


一方で、「美しい」自然であるオーロラを見ることができる機会が増えてきました。
統計的にオーロラが出現しやすいとされる磁気緯度が南緯65°から70°の地帯をオーロラ帯と呼びますが、昭和基地はオーロラ帯の真下に位置しています。
そのため、晴天であれば高い頻度でオーロラを見ることができます。
オーロラは、極域近辺で見られる大気の発光現象です。
太陽の表面で爆発が起きた時に太陽風が発生しますが、この太陽風はプラズマ状の電気を帯びた粒子でできています。太陽風が地球周辺に到達した際、強い電気が発生して電流が流れ、地球に大量の電子を降らせます。その電子が地球の大気中にある原子と衝突して発光し、オーロラが発生します。オーロラは、それが光っている高さの大気中の主成分と宇宙から降り込んでくる電子エネルギー強度の関係によって色が異なり、形状も様々です。
静寂の中、満天の星空と共に見るオーロラはとても幻想的です。

昭和基地でのオーロラの様子①


昭和基地でのオーロラの様子①

昭和基地でのオーロラの様子②


昭和基地でのオーロラの様子②

※ 掲載協力:国立極地研究所